シフトはいつまでに通知しなければいけない?
シフト制を採用している事業所では、「シフトは従業員にいつまでに知らせればよいのか」と悩まれている事業主の方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、シフトの通知期限について、法律に具体的な定めはありません。
ただし、通知のタイミングが毎回ばらばらだったり、シフト期間が始まる直前になったりすると、従業員は予定が立てにくくなります。
それが不満につながり、労使トラブルに発展するおそれもあります。
厚生労働省は「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」(令和4年1月策定、令和8年6月改正)で、シフト制を採用する場合に押さえておきたいポイントを示しています。
今回は、その中から一部を抜粋して紹介します。
シフト制とは
留意事項では、シフト制を次のような働き方と定義しています。
労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間(1週間、1か月など。)ごとに作成される勤務割や勤務シフトなどにおいて初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような形態
なお、年や月などの一定期間の労働日数・労働時間数があらかじめ決まっていて、就業規則等で定めた勤務パターン(早番・遅番など)を組み合わせて勤務する、従来からの「交替勤務」は、ここでいうシフト制には含まれません。
1.労働契約の締結時に明示すべき労働条件
労働契約を結ぶ際、使用者は賃金や労働時間などの労働条件を労働者に明示しなければなりません(労働基準法第15条)。
シフト制の場合は、特に次の2点に注意が必要です。
(1)「始業及び終業の時刻」に関する事項
労働契約の締結時点で始業・終業時刻が確定している日については、その日の始業・終業時刻を明示しなければなりません。そのため、労働条件通知書等に単に「シフトによる」と記載するだけでは足りません。
例えば、次のような対応が必要です。
- 労働日ごとの始業及び終業時刻を明記する
- 原則的な始業及び終業時刻を記載したうえで、労働契約の締結と同時に定める一定期間分のシフト表等をあわせて労働者に交付する
(2)「休日」に関する事項
労働契約の締結時に休日が定まっている場合は、これを明示しなければなりません。具体的な曜日等が確定していない場合でも、休日の設定にかかる基本的な考え方などを明示する必要があります。
労働基準法では、使用者は労働者に対して、毎週少なくとも1回、または4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならないとされています(労働基準法第35条)。
明示する「考え方」も、最低限この基準を満たす内容にしておく必要があります。
なお、「4週間を通じて4日以上」とする方法(いわゆる変形休日制)をとる場合は、どの日から4週間を数えるのか(起算日)を就業規則等で明らかにしておく必要があります(労働基準法施行規則第12条の2第2項)。
2.就業規則に規定すべき事項
常時10人以上の労働者(パート・アルバイトを含みます)を使用する事業場では、就業規則を作成し、労働基準監督署へ届け出る義務があります。「始業及び終業の時刻」や「休日」は、就業規則に必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)です(労働基準法第89条)。
そのため、シフト制労働者について就業規則に「個別の労働契約による」「シフトによる」とだけ記載した場合、就業規則の作成義務を果たしたことにはなりません。
一方で、基本となる始業及び終業の時刻や休日を定めたうえで、「具体的には個別の労働契約で定める」「具体的にはシフトによる」旨を定めることは差し支えありません。
3.労働契約に定めることが考えられる事項
(1)シフトの作成・変更の手続
シフトの作成に関するルール
使用者・労働者の双方にとって労働条件の見通し(予見可能性)を高め、労働紛争を防ぐという観点から、シフト制であっても使用者が一方的にシフトを決めることは望ましくないとされています。使用者と労働者で話し合い、シフトの決定に関するルールを定めておくことが考えられます。例えば、次のような事項です。
- シフト表などの作成に当たり、事前に労働者の意見を聴取すること
- 確定したシフト表などを労働者に通知する期限や方法
冒頭の「シフトはいつまでに通知すればよいか」という点は、まさにこの「通知する期限や方法」として、あらかじめ労使で取り決めておくことが考えられる事項に挙げられています。
シフトの変更に関するルール
一度確定したシフト上の労働日や労働時間等を変更することは、基本的に労働条件の変更に当たります。労働契約法第8条では「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」とされています。
これを踏まえ、確定した労働日・労働時間等の変更は、使用者と労働者の双方が合意したうえで行うようにしてください。
こうした変更を円滑に行うため、例えば次の事項について、あらかじめ使用者と労働者で話し合い、合意しておくことが考えられます。
- シフトの期間開始前に、確定したシフト表などにおける労働日、労働時間等の変更を使用者又は労働者が申し出る場合の期限や手続
- シフトの期間開始後に、使用者又は労働者の都合で、確定したシフト表などにおける労働日、労働時間等を変更する場合の期限や手続
(2)労働日、労働時間などの設定に関する基本的な考え方
シフトで具体的な労働日・労働時間や始業・終業時刻を決める場合でも、労働者が契約内容を正しく理解できるよう、その基本的な考え方を労働契約であらかじめ取り決めておくことが望まれます。例えば、労働者の希望に応じて、次の事項について労使で話し合い、合意しておくことが考えられます。
- 一定の期間において、労働する可能性がある最大の日数、時間数、時間帯
(例:「毎週月、水、金曜日から勤務する日をシフトで指定する」など) - 一定の期間において、目安となる労働日数、労働時間数
(例:「1か月○日程度勤務」「1週間当たり平均○時間勤務」など)
これらとあわせて、一定の期間において最低限労働する日数、時間数などを定めることも考えられます。
(例:「1か月○日以上勤務」「少なくとも毎週月曜日はシフトに入る」など)
まとめ
シフトの通知期限は、法律で一律に決められているわけではありません。だからこそ、事業所ごとにルールを決めて、労使で共有しておくことが大切です。
- 「翌月分のシフトは前月○日までに通知する」のように、通知の期限と方法を具体的に決めておく
- 労働条件通知書には「シフトによる」だけでなく、始業・終業時刻や休日の考え方まで明示する
- 就業規則には基本となる始業・終業時刻と休日を定めたうえで、「具体的にはシフトによる」とする
- 確定したシフトの変更は、労使の合意を前提に、期限と手続をあらかじめ決めておく
などがトラブルを防ぐためにも有効です。
「今の労働条件通知書や就業規則で問題ないか」「シフトのルールをどう決めればよいか」など、気になることがありましたらお気軽にご相談ください。
リムコンサルティングスタッフ

大阪府和泉市を拠点として、堺市や大阪市を中心に人事・経営のコンサルティングを行っています。
社会保険手続きなどの実務支援から、組織づくり、賃金制度・人事制度設計などのコンサルティングまで、幅広く企業の経営をサポートしています。
代表 中小企業診断士・特定社会保険労務士 丸山 理一


