副業・兼業は「収入の補填」から「キャリア形成」へ 副業の最新調査
副業・兼業の最新調査からみる働き方
近年、働き方改革や人材不足、キャリア観の多様化を背景に、副業・兼業の動きが広がっています。
「副業を認めるべきか」「制度としてどう設計するか」を検討されている事業所様も多いのではないでしょうか。
2025年10月末に、パーソル総合研究所とエン株式会社から、副業・兼業に関する最新調査が公表されました。
今回はそれらをもとに、現状の傾向や整理しておくべきポイントについてご紹介します。
副業を認める企業は増加傾向
パーソル総合研究所「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」によると、
- 副業を許可している企業の割合(副業容認率)
- 副業人材を受け入れる企業の割合(副業受入率)
はどちらも上昇傾向にあります。

また、エン株式会社の「副業・兼業」に関する企業の実態調査でも、
「社員の副業・兼業を認めている」企業は49%(認めている:20%、一部認めている:29%)と、約半数に達しました。(前年からプラス3ポイント)
調査対象の違いや、調査規模による差はあるものの、どちらの調査からも副業を視野に入れた働き方は確実に広がっている、と言えるかと思います。
副業をする理由も「収入」から「自己成長」へ
パーソル研究所の同調査の個人調査では、副業を行う理由として、
- 上位である副収入を得たいといった 収入補填 → 減少傾向
- 副業で好きなことをやりたい、自分のスキルが他の場所でも通用するか試したい → 上昇傾向
という結果でした。
つまり、「副業=収入のため」 から「副業=キャリア形成・自己実現」 へと意識が変化していることがわかります。

副業を認めてよかったこと・困ったこと
エン株式会社の調査では、副業を認めている企業に対して「よかった点」を聞いたところ、
- 特にない(42%)
- 社員のモチベーションが向上した(19%)
- 離職率が低下した(18%)
という結果でした。

副業を認めることで、離職に繋がるのではという心配の声も聞かれますが、
- 副業で得たスキルが職場に還元される。
- 社員自らがやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求できる。
- 収入面が安定する。
などの理由から副業は、むしろ “社員が会社にとどまる理由” になるケースも多いようです。
一方で、「困った点」としては、特に困ったことはない(67%)と多くを占めましたが、続いて
- 労働時間の管理が煩雑になった(12%)
- 社員の過重労働に繋がった(10%)
などが挙げられています。

その他にも、副業先が競業企業の場合など、情報漏洩などの点も気になるところです。
今後、副業・兼業を認める場合、事業主として、どのような点に注意して制度を設計する必要があるかを見ていきたいと思います。
企業が制度として整えるべきポイントは?
本来、勤務時間以外は自由時間であり、どのように過ごすかも自由であるべきです。
国も、副業や兼業を促進する方向性を打ち出して厚労省のモデル就業規則(令和5年7月版)も、次のとおり、副業や兼業を認める内容となっております。
(副業・兼業)
第70条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 会社は、労働者からの前項の業務に従事する旨の届出に基づき、当該労働者が当該業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止又は制限することができる。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合
しかし、副業や兼業については、長時間労働による健康被害の危険性や、モデル就業規則にも記載があるように、企業秘密の漏洩や企業の信用損失などのリスクがあります。
そういったことから、フリーランスなどの形態で働くことのみを認めたりといった事前許可性とするなど、事業所ごとの特性に応じた制度設計をすることが必要です。
詳細は、厚生労働省のホームページに掲載のガイドライン等でもご確認いただけます。
副業・兼業に関する厚生労働省ホームページはこちら
今回ご紹介した調査はこちら
リムコンサルティングスタッフ

大阪府の和泉市・堺市などを拠点に、人事・経営のコンサルティングを行っています。
社会保険手続きなどの実務支援から、組織づくり、賃金制度・人事制度設計などのコンサルティングまで、幅広く企業の経営をサポートしています。



