退職金制度はありますか?中小企業の7割が導入する「中退共制度」とは
退職金制度はありますか?
厚生労働省の令和5年「就労条件総合調査」によると、退職給付(一時金・年金)制度がある企業割合は74.9%。
企業規模別にみると、「1,000人以上」が90.1%、「300~999人」が88.8%、「100~299人」が84.7%、「30~99人」が70.1%となっています。
退職給付制度がある企業について、制度の形態別の企業割合をみると、「退職一時金制度のみ」が69.0%、「退職年金制度のみ」が9.6%、「両制度併用」が21.4%。
また、退職一時金制度がある企業について、支払準備形態(複数回答)別の企業割合をみると、「社内準備」が56.5%、「中小企業退職金共済制度」が42.0%、「特定退職金共済制度」が9.9%となっており、「30~99人」の企業に限ってみると、「社内準備」が49.6%、「中小企業退職金共済制度」が48.5%で、約半分の企業が「中小企業退職金共済制度」を活用していることがわかります。
退職金制度がない企業が少しずつ増えてはきているようですが、それでも7割以上の企業で退職金制度があります。
今回は、その中でも多くの中小企業で利用されている「中小企業退職金共済制度(中退共)」の概要やメリットについて解説します。
中小企業退職金共済制度(中退共)とは?
中退共制度は、昭和34年に国の中小企業対策の一環として制定された「中小企業退職金共済法」に基づき作られた退職金制度です。
国の法律によって作られた歴史のある退職金制度ですので、安心して活用できます。
制度の概要
- 事業主が中退共と退職金共済契約を結び、毎月の掛金を金融機関に納付します。
- 従業員の方が退職した際には、中退共から直接退職者した方に退職金が支払われます。
会社が積み立て・支払いを行う一般的な退職金制度と異なり、社外積立のため管理が簡単で、倒産時にも保全される点が大きなメリットです。
加入できる企業
中小企業向けの制度のため、加入には業種により資本金や常用従業員数の条件あります。

加入できる従業員
従業員(正社員)の方は原則、全員加入が必要で、個人ごとに加入・未加入を選択することはできません。
ただし、社内規定などで「勤続2年目から加入」などの条件を付けることは可能です。
また、短時間勤務の従業員の方(週の労働時間が30時間未満)の加入は必須ではありませんが、任意で加入することもできます。
※事業主の方は加入することはできません。

掛金と助成制度
掛金は、従業員ごとに毎月5,000円~30,000円中で選択可能です。
掛金は変更可能なので、勤続年数や給料、役職などに応じて自由に設定できます。

※掛金は全額事業主負担(全額非課税)となります。会社が退職金を支払うための積立制度なので、社会保険料のように従業員に負担させることはできません。
さらに、はじめて中退共制度に加入する事業主の方には、国からの助成があります。
- 加入後4か月目から1年間、掛金月額の1/2(上限5,000円/人)の助成
- 掛金を増額する場合にも、増額する月から1年間、増額分の1/3(上限18,000円以下)の助成
これにより、初期導入コストを抑えて退職金制度をスタートできるようになっています。
さらに、はじめて中退共制度に加入する場合、加入前の勤務期間分についても遡って掛金を納付することができる通算制度もあります。この場合の掛金も全額非課税です。
支給額
支払われる退職金額については、中退共のホームページに詳細な金額表があるので、ご覧ください。
基本退職金額表はこちら(中小企業退職金共済事業本部ホームページ)
ちなみに、掛金の納付が1年未満の場合は、退職金は支給されず、1年以上2年未満の場合は掛金相当額を下回る額になります。
そして、2年から3年6か月では掛金相当額となり、3年7か月から掛金相当額を上回る額になります。
退職金制度は「採用」と「定着」にも効果あり
退職金制度がある企業は採用時のアピールポイントになるだけでなく、定着率向上や離職防止にもつながります。
月5,000円から始めることができ、多くの企業が加入している中退共制度を、この機会にぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
リムコンサルティングスタッフ

大阪府の和泉市・堺市などを拠点に、人事・経営のコンサルティングを行っています。
社会保険手続きなどの実務支援から、組織づくり、賃金制度・人事制度設計などのコンサルティングまで、幅広く企業の経営をサポートしています。



