11月は「テレワーク月間」~テレワーク導入の現状と注意点~
毎年11月は「テレワーク月間」と定められています。
内閣官房・総務省・厚生労働省などが連携し、企業や団体が一体となってテレワーク推進に取り組む期間です。
また、2025年10月1日から改正育児・介護休業法が施行されました。
※過去の記事はこちら↓
2025年10月1日施行の改正育児・介護休業法 必要な対応は?【その1】
2025年10月1日施行の改正育児・介護休業法 必要な対応は?【その2】
この中で企業に求められる「柔軟な働き方を実現するための措置等」には、「テレワークの導入」も含まれており、新たに制度を導入した事業所様も多いのではないでしょうか。
テレワークの導入状況は?
総務省が、常時従業員数100人以上の企業を対象に行った「令和6年通信利用動向調査」によると、テレワークを導入している企業の割合は47.3%です。

前年度に引き続き、導入企業は減少となりましたが、導入目的として、「新型コロナウイルス感染症への対応」が前年より減少している一方、「勤務者のワークライフバランスの向上」、「業務の効率性(生産性)の向上」が増加しています。
また、パーソル総合研究所が全国の就業者を対象に2025年7月に実施した「第十回 ・テレワークに関する調査」では、従業員のテレワーク実施率は22.5%で、ここ3年、前年同期比でほぼ横ばいとなっています。
なお、こちらの調査は、従業員人数10人以上の企業で働く就業者を対象に調査したものです。

こちらの調査で、テレワーク実施者に継続の希望を聞いたところ、「続けたい+やや続けたい」の割合が計82.2%と過去最高になっています。
2020年後半以降、高止まりの状態が続いていて、従業員の方は「柔軟な働き方」を希望していることがうかがえます。

総務省の調査とパーソル総合研究所の調査では、対象や方法の違いから実施率に差がありますが、結果からは、企業としても個人としても「ワークライフバランス」や「柔軟な働き方」を重視していると言えるかもしれません。
テレワークの効果
テレワークを導入することにより、次のような効果が期待されています。
(1) 業務生産性の向上
営業先から営業先へ移動する隙間時間にサテライトオフィスで仕事が可能となる、在宅勤務で電話対応が減り集中して作業できるなどの理由により、生産性の向上が期待されます。
(2) 新規雇用・離職防止
さまざまな調査から、労働者の「柔軟な働き方」を求める傾向が高くなっており、このニーズに対応することが人材確保・定着の促進に繋がります。
(3) 社員のワークライフバランスの実現
仕事と育児・介護の両立の促進や、通勤時間を自己啓発や趣味・健康管理にあてることが可能となることで、モチベーションアップも期待されます。
(4) コスト削減
Web会議による出張費の削減や、フリーアドレス等により賃料や電力をはじめとするオフィス関連コストの削減に繋がるほか、テレワークを導入した多くの企業で、残業代が10%以上減少したというデータもあります。
(5) 事業継続性の確保
自然災害や新型インフルエンザ、さらに新型コロナウイルス感染症などのパンデミック発生時でも、普段から在宅勤務などのテレワークを導入していれば、事業継続(BCP)が可能となります。
テレワーク導入にあたって就業規則等の注意点
テレワーク導入にあたって、「テレワーク規程」を作成される事業所様も多いと思います。
こちらについては、厚生労働省の「テレワークモデル就業規則」に詳しく解説されています。
今回は、特に注意していただきたい、テレワーク中の従業員の方の「労働時間管理」と「費用負担・手当」について、一部紹介します。
◆労働時間管理について
「事業場外みなし労働時間制」を適用される場合
事業場外みなし労働時間制は、従業員が事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定することが困難なときに適用される制度であり、会社の具体的な指揮監督が及ばない事業場外で業務に従事することとなる場合に活用できる制度で、その業務に通常必要とされる時間(労使協定が締結されている場合は当該協定で定めた時間)を労働したものとみなす制度です。
テレワークにおいて、次の①②のいずれも満たす場合は制度を適用することができます。
①当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
以下の場合については、いずれも①を満たすと認められ、情報通信機器を労働者が所持していることのみをもって、制度が適用されないことはありません。
- 勤務時間中に、労働者が自分の意思で通信回線自体を切断することができる場合
- 勤務時間中は通信回線自体の切断はできず、使用者の指示は情報通信機器を用いて行われるが、労働者が情報通信機器から自分の意思で離れることができ、応答のタイミングを労働者が判断することができる場合
- 会社支給の携帯電話等を所持していても、その応答を行うか否か、又は折り返しのタイミングについて労働者において判断できる場合
②当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと
使用者の指示が、業務の目的、目標、期限等の基本的事項にとどまり、一日のスケジュール(作業内容とそれを行う時間等)をあらかじめ決めるなど作業量や作業の時期、方法等を具体的に特定するものではない場合
事業場外みなし労働時間制の制度自体は、情報通信機器が発展していない昔にできた制度で、最近では、メールやLINEなどを活用することができるので、このような要件を満たすのは難しい面もあるかもしれません。
◆費用負担・手当について
テレワークに当たって生じる、情報通信機器の通信回線費用や水道光熱費、消耗品費等をどちらが負担するかについて、あらかじめ決めておく必要があります。
特に、従業員に費用負担してもらう場合は、規定が必要です。
また、在宅勤務手当や通勤手当等の支給の有無についても規定する必要があります。
この他にも、先ほどご紹介したパーソル総合研究所「第十回・テレワークに関する調査」では、テレワークにより「部下様子がわからなくなった」、「非対面のやりとりは、相手の気持ちがわかりにくく不安だ」などの意見も多くなっています。
それぞれの社風などにあわせて、面談の頻度を増やすなどコミュニケーションの面での工夫が必要となるかもしれません。
以下のサイトには、取り組み事例なども掲載されていますので、ぜひ参考にしてみてください。
次回は、テレワーク導入にあたり活用できる助成金「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」 をご紹介します。
リムコンサルティングスタッフ

大阪府の和泉市・堺市などを拠点に、人事・経営のコンサルティングを行っています。
社会保険手続きなどの実務支援から、組織づくり、賃金制度・人事制度設計などのコンサルティングまで、幅広く企業の経営をサポートしています。



